重度知的障害児の母がインクルーシブ教育を考える

昨年からよく話題に出されるようになったインクルーシブ教育

重度知的障害児の息子を持つ母ちゃんが実際に支援学校に通う様子を見て考えたことをお話しします。

息子の就学先に支援学校を選んだわけ

近年の日本では障害があると支援学級や支援学校への通学をメインに考えるのが普通とされてきました。

重度知的障害のある息子は支援学校に通うことを選び、それは息子にとっても良い選択となりました。

一方で、息子と同じように重度知的障害の判定を受けていても支援学級に通われているお子さんもいらっしゃいます

以前にもこのブログで書いたこともあるように支援学級を見学に行った時には息子が入学するなら受け入れると言い切ってくださった先生もいました。

では何故支援学校を選んだのかと言えば、それは大きく3つの理由があります。

施設面での違い

地元の普通の小学校は階段の手すりに柵はありません。

窓ガラスなども強化ガラスではありません。

教室や廊下も広く、ベランダもあります。

就学前の息子は突発的に走って教室から脱走したり、高いところに登ったりするのも好きでした。

また広い場所だと目に入って来る情報も多く、落ち着かないこともあります。

もし先生の知らぬ間に階段の手すりに登って落ちてしまったら、パニックになって窓ガラスを叩いたり蹴ったりしてしまったら、ベランダに出て遊んでいるときにそこを乗り越えて落ちたらなど、他にもゾッとするような怖い事態が幾つも想定できてしまいました。

とどのつまり、普通の小学校の施設面ではそうした危険が予測ができない重度知的障害児の息子には安全ではないと感じたのです。

人員面での違い

支援学校は6人1クラスで、担任の先生の他に補助の先生が一人ついてくれています

なので、先生が一人一人により深く関わってくださっています。

そのわかりやすい例は連絡帳でのやり取りです。

担任の先生と交換日記の如く、毎日やり取りをしているので、日々の様子や問題行動についての相談なども密にできています。

この辺りの手厚さは支援学校ならではですし、それが息子の学校生活をとても充実したものにしてくれているのは、息子の学校大好きさからも窺い知れます。

進学・就職面でのサポートの違い

支援学級は日本だと中学校までしかありません。

支援学校は小学部に入学すると大体の子が高等部までエスカレータ式に進学します。

そして、就労についての情報提供や、そうした施設への研修を学校の日程に組み込んでくださったりと、就労へのサポートも力をいれています

障害児の進路に悩む親御さんは多いと思います。

その一人として、支援学校という選択はやはり間違ってなかったと思います。

地域の学校のへ交流に行って思うこと

息子が通う支援学校では小学2年生以上になると地域の小学校に交流に行けるようになります

(交流に行くかどうかは本人と保護者の希望を取り、行かない方ももちろんいらっしゃいます。)

息子は2学期と3学期に1回ずつ地域の小学校の支援学級に交流に行っています

大体朝の会から2時間目までの時間で交流しています。

息子の心身の面から考えて、そこまでなら落ち着いていられるかなと思い、お願いしています。

参加するのも体育や生活単元など勉強にあまり関係ない参加しやすい授業に参加させてもらっています。

1学期は進級した変化に対応する時間がかかるので、やめています。

初めは、支援学校ではその学校の近くにある小学校の普通級のお子さん達と交流会があり、それに似た交流なのかと思っていました

しかし、この交流については、交流先が支援学級に限定されていました

地域で息子のことを知ってくださる方を増やしたいと思っていたので、支援学級だと交流できるお子さんや先生は限られていて、それがとても残念です。

インクルーシブ教育の利点は?

重度知的障害児の息子を持つ母ちゃんですが、実は息子が生まれて来るまでそういった障害を持った子が近くにいた経験がありませんでした

その母ちゃんがもしそういう子が近くにいた経験があったらよかったのにと思うことがあります。

障害を持つ子と接したことがあったら、

障害があっても楽しく生きていけることを知っていたら、

障害児者を助ける制度が色々あることを知っていたら、

何より障害がある人との接し方を少しでも知っていたら、

障害児者の特徴などを少しでも知っていたら、

などなど、もし少しでも障害児者に関する知識や接していた経験などがあったらよかったのにと思う瞬間は多いです

障害を持つかもしれない可能性は程度や部位の差はあれど、誰にも起こり得ます

また、母ちゃんのように障害を持つ子を育てる可能性も、高齢出産が増えているなど社会的な状況を見ても高くなってきています

他人事がいつ自分のことになるか分からない。

起きてから知識ゼロで対処するのと、ある程度の心構えがあって対処するのは雲泥の差です。

それは何の知識も持たずに重度知的障害の息子を持った母ちゃんが嫌というほど身に染みて感じています。

なので、普通級のお子さんと障害児者が関わる機会を作れたらきっと双方にとっていいことなのかなと思います。

もし普通の学校の施設が息子にとっても安全で、支援学校と同じように対応してくれるクラスが地域の小学校にあったとしたら、そして、将来の進路に関する問題もクリアされていたら、もちろん母ちゃんはそちらを選んでいたと思います。

さらっと書いたものの、上記のような状態に持って行くのはかなりたくさんの高いハードルをクリアしないと難しいでしょう。

でも、教育の現場で働いておられる先生方の中には、重い障害を持つ子でも望むなら地域の学校でも受け入れておられたり、そういう子達の適切な支援ができるように勉強したり、施設面での問題を解決しようと動いてくださったりと、こちらの思っていた以上に熱心に考えて行動されている先生もいらっしゃいました。

それを見ていると日本でも制度面での後押しが整ってくると、どんな障害があっても望む教育が受けられるようになってくるのではないかと期待できそうな気がします。

インクルーシブ教育に注目が集まり、これからどうなって行くのか。

知らないことも多く、今回少し調べてみただけでも色々と勉強になりました。

それがより多くのお子さんみんなにとって良いものとなっていってくれるよう願いつつ、今母ちゃんにもできることを考えていきたいと思います。

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